句集(2011-2012)ー附 どうして私は俳句をつくるようになったかー

昔俳句をやっていまして…と呟いたらとある方に「是非ご紹介を」と言われまして昔のPCをまさぐって発掘作業。 

 

分かりやすくも、デスクトップに保存してありました。いつかどこかに投稿でもする積もりだったのかしら笑

 

一部の方ならご存知かもしれませんが、私は再受験で2回目の浪人をしていた時分に一時期俳句に没頭していた時期がありました。
きっかけは、勉強の休憩がてらに散歩していたとき、ふと路傍に咲く儚げな花(もちろん、このときは花の名前なんて知らなかったので、もう思い出せないのが至極残念)にこころを奪われたこと。

 

私は、あまりにその花の美しさに息を呑んで暫く放心して見とれていたのですが、我に返ると、何とかそれをことばで表現したいと猛烈に思うようになりました。
丁度一年目の医学部受験があえなく失敗し、また徒刑のような(ではなかったけれど)受験勉強の日々を送っていた頃です。
先が見えない漠然とした焦燥感に駆られる一方で、「人間のこころを取り戻したい」という鬱屈を抱えていたように思います。

 

そんな中、こころの奪うような路傍の花を見つけてしまったわけですが、どうにも自分には適切な語彙や文体を見つけることができず、悶々とするしかありませんでした。

 

別に美しい花を見て、頑張ってことばにしようなんて思わなくてもよくて、かえって下手な美辞麗句を並べると折角の美しさが台無しになってしまうでしょう。

小林秀雄は「美しい「花」がある。「花」の美しさという様なものはない」と言っています。「そうか、これこそが『美しい「花」がある』という感動なのか」とその場で納得すれば良かったのかもしれません。

けれども、その時の私は、「いや、違う。「『花』の美しさ」についてひとは言及したいのだ。それを自分でことばにしなけば納得できないし、ことばで伝えられてこそ、深く感動することもまた可能になるのだ」と何故か頑なに考えていました。

 

そうして行き着いたのが、散文ではなく、俳句でした。創作なんて小学校以来も全く経験していなかったのに…

 

ー俳句のどこが凄いのか?

 

 

それについては、また別の機会に書きましょう。
発掘作業を機に、少しまた俳句の勉強も復活したいと思います。

 

以下、記念に?発掘した句を掲載します。
(当時は練習を兼ねて駄作だと思いながら毎日一句は作っていました) 

 

 

 

待ち人や針の進まぬ秋の先

 

胸に満つ秋本番や都人

 

賀茂の水冴えて一睡京の秋

 

秋刀魚焼く家路辿るも唯独り

 

仮初めの秋刀魚となりしか不寝の番

 

初秋刀魚童あらそひ煙立つ

 

秋空や雲の間に間に漸近す

 

スケッチに微分せんとや秋の風

 

路地裏や残る暑さの一輪車

 

中秋や峠向こうの宿いずこ

 

名月やコーラかざして歌舞くかな

 

にゃあと啼く月見愉しや鴨河原

 

サッカーボール団子に代へて供へけり

 

きりぎりす独り草球蹴り返し

 

沈黙に別れて尚も後の月

 

恋果てに虫の訪う鴨河原

 

レインコート秋のはざまは騒々し

 

秋雨や紙飛行機はしまひけり

 

独り寝に耳を澄ませば秋の雨

 

くれなゐの相合い傘にて秋を往く

 

新畳のにほひたつなり秋時雨

 

鈴虫や仮寝にたへず御所南

 

ギムレット宵には早し名残月

 

皺深し父寝言する敬老の日

 

長雨や紅葉饅頭刈るに惜し

 

るんるんるん颱風の跡虫の音

 

豆腐売り笛の響けり鰯雲

 

秋焼けや窓に股がる翁かな

 

秋分やをとめ歩めり思ひ出の道

 

彼岸花 only oneこそ哀しけれ

 

還暦や問わず語りの衣替え

 

秋風にややも遅れて異国の便り

 

秋晴れに靴の浮き立つ御堂筋

 

長き夜の待ち受けもせず丑三つ

 

母の手の小さきことよ青蜜柑

 

秋燈下珈琲の底しづまれり

 

日の出前酔ひを醒まして内定式

 

秋寒や猫の寄合邪魔をせず

 

金木犀見返しうなじに三十路あり

 

秋雨や願書に愁ひも込めやりて

 

齧らざる林檎のかほり跡にして

 

たけなわの残り葡萄の渋みかな

 

静けさや秋の蚊の鳴く自習室

 

秋の暮蛍雪時代は老い易く

 

止まり木をまだ探してゐる秋の蝉

 

体育の日寝坊にピストル撃ちてやりて

 

答案を紙ヒコーキにして秋空

 

軒渉る痩鴉の秋思かな

 

薄闇夜白粉花の濡れ重し

 

毒虫に身をやつすかな神無月

 

ゆく秋や試験の曜日に朱を入れ

 

降りしきる銀杏の影に猫二匹

 

猫じゃらしをんなという字にありにけり

 

虫の音絶えても分け入る空地かな

 

咳の声押し黙りし頃小鳥来る

 

水澄みて髭男爵の睨めっこ

 

一とせや時代祭の夢ごとし